2月3日火曜
いよいよ、文化庁文化交流使としての初仕事の日です。
パリは約4年前に訪れて以来、2度目の訪問。前回はピアニスト・木原健太郎さんと二人でのユニットを披露するためであったので、初めての能だけでの訪問でした。
私が今回、パリを選んだのは、スバリ、世界の先進国で最も文化に篤い国だから。そして、日本にとても理解のある国ですね。
そしてなんといっても「世界最高の文化都市」だと思ったからです。これは、前回の訪問でそう感じました。
パリにある、オペラ座。この豪華さと共に、フランス人から深い尊敬を集めるオペラに、とても衝撃を受けました。
私は欲張りなので(笑)、まずアメリカ大陸の前に、ヨーロッパを廻りたかったのです。
それで、パリを選びました。
パリ市内の街並みは、見事なまで歴史と伝統文化の薫りを漂わせています。
こんなところで、能を広めて、知ってもらったら、パリの人々はどう思うのだろう?
それが、動機です。
パリには、他流の皆様は昔からいらしているようですが、我が金春流では、恐らく今回が初めてではないかと思います。
なので、金春流の1400年にも及ぶ歴史と伝統をどう伝えるかが、ひとつのポイントでした。
なので、冒頭は、素謡「翁」。
金春流の「翁」をパリで披露したのは、間違いなく歴史上初だと思います。
そして、きちんと言葉で、我が金春流の1400年の歴史、そして、「翁」が「皆が争いや苦しみを味わうことなく、幸せに楽しく暮らせるようにとの日本古来からの祈り」であること。これを、強調しました。
パリ日本文化会館の窓から古い街並みやエッフェル塔を見ながら、謡い、かつ舞うのは、とても感慨無量の想いでした。
そこには、多くの苦労に苦労を重ねてきた偉大なる先人たちへの畏敬の念を、忘れることは出来ません。勿論、その話もしました。
能の通り一辺倒ではない歴史の話、世阿弥以前の能の源流、大陸からの芸能宗教と日本古来の芸能宗教との融合と熟成と洗練。
武士との関わり、特に我が金春流と剣術柳生流との交流の歴史的事実。
現地の能がほぼ全体リハーサルをしない話や、「間・無」の概念等々、私が今まで浅学なから培ってきたものをフル活用して、お話しました。
そして、謡や舞の体験。実技の体験。
これは、能楽公演こそあれ能楽師どなたもまだパリでやっていない筈なので、一番のメインでした。
皆さんとても、熱心に取り組んで下さいました!
また、能面も体験して頂きました!
これは、体験者は驚きの(@_@)表情をされていました。
そして、様々な種類の舞を御見せして、能装束を着付け実演、舞も見せました。
口先だけでなく、きちんとお見せすること。これが、最も説得力があるのは、言うまでもないことです。
私は、東日本大震災復興支援の能楽師の会「息吹の会」での被災地でのチャリティー公演、そして、福島県いわき市での、雨の中での震災一年の鎮魂祭での能「羽衣」上演、そして、上演中に空が晴れ渡り、羽衣終演後には晴れ渡った奇跡の話などもしました。
そして、最近の痛ましいテロ、それにフランスの皆さんと共に、日本人も今悲しい想いに沈んでいる、しかし、日本は古来から、他者を認め多様性を認め合い取り入れて、宗教も文化も完成されていった。能も古来から「幸せや平和への祈り」である。
なので、対立や憎しみではなく受け入れて認め合う、そういう方向に未来を向いて、進んでいくべきではないか、そんなお話をしました。
通訳の若い女性の方が、私がこんなことをお話したら感極まって言葉に詰まってしまって、、、、
こういう話は、日本でもそうですが、ましてや他国・他人種・他宗教の方々にお伝えするには、誤解される恐れもあり、リスクが伴うことです。
しかし、私としては、能はガラス張の中の代物ではない、今生きているものなのだ。今生きている我々に生きる勇気や知恵を与えてくれるものなのだ。
そういうことを皆さんにお伝えしたかったのです。
その思いは、パリの皆さんにも伝わったと思います。
時間が延びてしまって、質問の時間が少しになってしまったのが悔やまれます。
アンケート用紙を配ったのですが、多くの方が「家でゆっくり書きたい」とのことで、持ち帰られてしまいました。
一体どんな感想が寄せられるのか、楽しみです。
終演後にも、お帰りにならずに熱心に質問をされてこられる方々も。
「現代の能で、新しい作品、新作というのはあるのか?」
「本番の何処のプロセスで、能の『祈り』が始まるのか。」
こんな質問もありました。
初めてのパリの皆さんとの交流は、こうして幕を閉じました。
まだまだ、名残は尽きないひとときでした。
これを第一歩として、またパリでの能の普及に訪れたいです。
文化交流使としての最初のレクチャー。
始まる前は、緊張感が高まりましたが、始まれば普段通り、楽しく深く能を知って頂いた機会となりました。
皆様、ありがとうございました!
m(__)m
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パリ日本文化会館にて能ワークショップ開催!
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