昨日は、国立能楽堂本舞台にて、唯一の全体リハーサル(能楽界では『申し合わせ』といいます)でした。
いつもの共演者の中に、梅若紀彰さんがお一人入ったたけで、全く普段と異なる緊張感が、舞台を包みました。
紀彰さんの廻りには、優しい柔らかいオーラが包んでいました。
紀彰さんは、私よりも15歳ほど年上。
正に、『脂の乗りきった役者』の円熟の芸です。
地謡も、お囃子も、素晴らしいベストメンバーが揃い、最高峰の世界を創って下さいました。
能の場合、「申し合わせ」というのは、単なるリハーサルなので(こういうと舐めてるみたいですがそうではなく)、全体の顔見せ・流れの確認的な要素もあります。
それでも、昨日はかなりの緊張感でした、、、
当日は、私も力むことなく、自分を信じて、自分の思うままに自然体で勤めたいと思います。
さて、その後に、当日に使わせて頂きます能面を拝借にいくために、師80世金春安明先生とご自宅へ。
その道中に、安明先生からご助言を賜りました。
安明先生は、いつも、その深いご自身の学術的見地からのお話や考え方もさることながら、ご助言も的確なポイントを突いておられます。
昨日のご助言も、そうでした。なるほど、と拝聴しました。ありがとうございます!
そして、今回の能「蝉丸」のシテ『逆髪』の専門の面、『十寸髪(増髪)』を拝借させて頂きました。
金春家で大切に伝来されている能面を、特別に拝借致しました。
ありがとうございます!
作者は、『古源助(こげんすけ)』。
越前出目家の三代目。今から、丁度400年前の名工のものです。
安易に写メを添付することは控えさせて頂きますが、品格のある、力のある、素晴らしい面です。
いい能面というのは、ただ単に、綺麗に造形的に出来ているものとは限りません。
何かこちらに迫ってくる、それ自体に力を秘めているもの。これが、本当に素晴らしい面(おもて)だと思います。
(79世金春信高先生は、当時能楽界随一の能面の『目利き』でいらっしゃいました。信高先生は、「いい能面を見極める目は、いい能面を沢山観ることでしか培われないよ」と仰っておられたのを思い出しました)
この『古源助』の『十寸髪』もそうです。
手に取って、少し角度を変えるだけで、豊かな、深い表情を見せてくれます。
「逆髪」の憂いと哀しみを、見事に湛えています。
本番までの数日間、この素晴らしい面と対話して、当日には一体となって勤められたらと思っています。
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第73回文化庁芸術祭参加公演
山井綱雄芸道40周年記念
第13回山井綱雄之會
異流共演能「蝉丸」 山井綱雄(シテ逆髪)梅若紀彰(ツレ蝉丸/観世流梅若家御後胤)野村萬斎(アイ) / 狂言「成上り」 野村萬斎 / 金春流能楽師仕舞
2018年10月26日(金)18:00開演
国立能楽堂